1. 夜の街を歩くあなた
冬の夜。街を歩くあなたの視線の先に、灯りの連なる大通りがあります。通り沿いのビルでは、エレベーターが静かに人を運び、駅では電車が予定通りに滑り込み、コンビニや飲食店は温かな光をこぼしています。
その光景はあまりにも当たり前で、あなたは立ち止まって考えることもないかもしれません。けれど、そのすべては見えない糸で結ばれています。
2. 見えない糸の正体
その糸の正体は、
- エネルギー:発電所で生まれ、送電線やケーブルを通って街に届く電気。
- 物理インフラ:鉄道、道路、ビル、橋、上下水道といった構造物。
- サイバーインフラ:半導体や通信ネットワーク、センサーが生み出す膨大なデータ。
今、私たちの社会はサイバーフィジカルシステム(CPS)の時代に入っています。現実世界のモノや動きを、センサーやIoTでデータ化し、デジタル空間で解析・最適化し、再び現実世界に反映する。この循環が、電力の安定供給から鉄道の運行管理、エレベーターの効率化、包装機械の省エネ運転まで支えています。
3. DXの波が街を変える
DX(デジタルトランスフォーメーション)は単なるIT化ではありません。エネルギーの需給調整も、駅構内の混雑解消も、包装材の設計改善も、船舶の燃費削減も、すべてデータと現場の往復=サイバーとフィジカルの融合で進化しています。
あなたが目にする快適さや便利さの裏で、無数のリアルタイムな意思決定が行われています。それは人の経験だけではなく、AIの予測やシミュレーションによって加速されているのです。
4. エネルギーと生活経済
しかし、この便利さと安定は、決して自動的に与えられるものではありません。エネルギーを作るにも、届けるにも、維持するにもコストがかかります。そして、エネルギー・生活経済・環境の三立は簡単ではありません。
- 環境を優先すれば、エネルギー供給の安定が揺らぐ。
- エネルギー供給を優先すれば、コストや環境負荷が増える。
- 経済性を優先すれば、将来の持続性が損なわれる。
この「トリレンマ」の中で、私たちはどう選び、どうバランスを取るのかを問われています。
5. その問いの先にあるもの
探究科学は、この問いに挑む方法を教えてくれます。仮説を立て、データを集め、比較し、改善策を導く。WEIストラテジストは、それを経済・社会・エンパワーメント・環境の4軸で評価します。
この2つの視点があれば、あなたは日常の中にある小さな改善の芽を見つけ、それを街全体や産業全体の価値へと育てていけます。
6. 第1部の結び
街を歩くあなたの周りには、数え切れないほどの仕組みと人の努力が重なっています。
そして、そのすべては未来を守るために、サイバーとフィジカル、現場とデータ、環境と経済のせめぎ合いの中で進化し続けています。
あなたがそこに加わることは、この巨大な循環の一部になること。
次のページでは、その循環の中であなたが推し活できる場所を見つける旅へ進みます。